『塔の上のマヤ』 ::: 後編 ::: by ムーン・ライト ![]() 4. ふぁあああ あらやだ、あんなにお日様が高くなってる!アタシったら寝坊してしまったわ! 結局王子は三日間ずうっとマヤと一緒にいて、夜は夜で第4ラウンドまで(計12ラウンド) 頑張るもんだから、うっかり全部みてしまったわ。 さてさて魔女さんももう御戻りのご様子で。いつもの通りマヤの髪が窓から垂れているわ。 「マヤ。あたしのいない間に誰もこなかったろうね」 「はい、おばあさん」 「いい子だね。あんたは清純でなければならないんだから誰とも会ってはいけないし話してもいけないよ。」 「誰ともお話していません。鳥さんとネズミさん以外は。」 「それでいい。」 マヤちゃんも結構な役者だね。ちょいと大根入っているような気もするけど。 でも… なにか嫌な予感がするのはアタシの気のせいかしら――――― ********************** それから幾日かたったある夕餉の刻のこと。 アタシはマヤからもらったチーズのかけらを食べていたら 「うぐっ…」 「マヤ?夕餉の支度はまだかい…どうしたんだ?」 「おばあさん、なんだか急に吐き気がして」 「…マヤ―――」 「はい?」 「あんた、あたしが旅にでている間に誰かこの塔に入れたね?」 「え?い、いいえ…」 「嘘をお言い!それはつわりじゃないか!誰か男とあっていたえ?この売女!」 あっ!マヤが腕を取られて塔の窓から引きずりだされてるわ! そんな乱暴なことしたらお腹の赤ちゃんが!!!! 「きゃああああああ!なにするのおばあさん!」 「この部屋から出てお行き!あんたのような、はしたない子はもう二度とここへ来るんじゃないよ!」 バタン!!!! 「おばあさん!ごめんなさい!どうか中へいれてください!」 ああ、かわいそうなマヤ。 結局中へ入れてはもらえずそのままどこか行ってしまったよ…。 もう会うことも、チーズをもらうこともできないのかねえ。 王子様もマヤがいないとわかったらどんなに驚くだろう… *********************** 「マヤ!マヤはいるか!約束通り迎えにきた!お前の髪を垂らしておくれ!」 「こんな夜更けに誰かと思えばあんたはハヤミブルグ王国の王子じゃあないかえ。 ここにはもうマヤはいないよ。」 「マヤがいない?そなたは…マヤが話していた魔女と見受けたが、マヤは今どこへ?」 「追いだしたんだよ。あたしとの約束を破って男と交わしていたんだ。 その相手はどうやらあなた様のようだが間違いないかい?」 「そうだ、私はマヤと再び逢うと約束を交わした!頼む、マヤの居所を教えてくれ!」 「知るもんかい!今頃はお腹を膨らませたままどこかの森で行き倒れになってるだろうよ。」 「腹を…?では子供が!こうしてはいられない!マヤを捜さねば!」 「お待ち!あの子と逢って幸せになることはこのあたしが許さないよ!」 王子危ない! 早く逃げて!魔女の稲光を浴びてしまったら……!! ピシャ! ガラガラ! 「うわあああああ!」 き、急に動かなくなったわ…王子大丈夫かしら…? 「ふん! 魔女との約束を破ったらどうなるか思い知るがいい!!」 魔女はそのまま立ち去ってしまった…!ああ王子!どうか生きていて! 「う、ううん…」 よかった!生きてる!怪我はないのかしら? 「なんだ?何が?―――何も… 何も見えない!私の眼はどうしたんだ!」 なん、で、すってええ!!!眼が見えないですって! 「これではマヤを捜すどころか一歩も前へ進めぬ!一体どうしたら…!!」 い、いいわ!!!ここはあたしがひとはだ脱ぎましょ!! 『馬さん馬さん、王子を連れてきた馬さん、アタシねずみよ! 同じ動物なんだから言葉わかるでしょ!』 『なんだお前は、ねずみが俺様に何用か?』 『お育ちがいいくせに態度が悪いわねえ!あんたのとこの王子が一大事なのよ! ちょっと手を貸すからあんたも協力しなさい!』 『手を貸す?』 『そうよ!この天才的な嗅覚とねずみ族の情報網を使ってマヤを捜すのよ! これしかあの二人を引き合わせる方法は無いわ!』 『ふうむ…王子が幸せになるんだったらそれしかないか…』 『割れあごのフランス人みたいなセリフはいてる暇があったら早く王子を背中に乗せなさい! 傍まで行けば王子はあんたの気配に気づくわ!』 『ねずみの言いなりになるのは面白くないが致し方あるまい』 まーどこまで感じ悪い奴! でもこれもマヤと王子の為と思って我慢我慢! マヤはいつも親切にしてくれたからいつか御礼と思っていたけどこれで返せそうね♪ 5. それから一年が過ぎ―――― さすがのアタシの嗅覚と情報網を使ってもマヤはどこにもいなかったわ。 王子もこれ以上長く国を離れることは出来なくてハヤミブルグ王国へ帰ってしまい、 そこで眼の治療と―――なんとお見合いをすることになったそう。 国での治療も効果は無く、不自由なままの状態での結婚は相手国の皇帝が渋ったそうだけど 皇帝の孫娘がマスミ王子を気に入っちゃってがどーしてもっていうもんだから結局婚礼が決まってしまったのよお〜 その後もあれよあれよと準備は進み 今日はいよいよ婚礼前のパレードが行われる日。 ああ、向こうからマスミ王子と孫娘を乗せた馬車が来たわ。 ちょっと失礼して馬車の天井に乗せてもらいましょ! 中の様子をそろりそろり、と。 「マスミ様。この私があなた様の御目の代わりとなりますわ。」 確かシオリとかいったかしら。美人だけど泣きぼくろがうっとおしいわねえ! 「ありがとうございます。シオリ姫」 ――――――マヤ、捜したが結局そなたは見つからなかった。 今頃どこで暮らしているやら…―――――――― なんだか王子の話し方も気のない話し方ねえ。 ふう。 おんやあ?先頭馬は王子ンとこの馬じゃあないの! ちょいと頭にのっかりましょ!よっこらせっと。 『お馬さん!王子ンとこのお馬さん!アタシよ!』 『なんだおせっかいネズミか。久しぶりだな、と言いたいところだがなんの用だ?俺はご覧の通り忙しいのだが』 『あいっかわらず感じわる!それよりあんたは気になってないの?王子の様子!』 『気にならんわけないだろう、お見合いが決まってからああやって王子は笑顔を取り繕ってはいるが 内心は氷のようだ。その御心を溶かすのはおそらくマヤさんだけしかいない。』 『でもどこ探してもいなかったじゃない。小柄で黒髪の長い目の大きな娘。おそらくは乳飲み子を連れて…』 『――おい?どうした』 『――いたわ――マヤがいたわ!!!!!』 『え?どこだ!』 『あそこよ!右側の鍛冶屋の隅っこでこちらを見ているのマヤじゃなーい?』 『―――間違いない―――こんな近くにいたのか――だがどうする?』 『あたしにいい考えがあるの、あんたはこのあたりで止まってちょうだい!』 「おい!先頭馬が止まったぞ!」 「こら!どうした!進まんか!」 「きゃああ!馬車にねずみが!だれかあ!」 「シオリ様の悲鳴だぞ!」 チャンス! 『チューチューチュー!!(←王子!こちらへ来てください!と言っている)』 「その鳴き声は…共にマヤを捜してくれたネズミか?マヤがみつかったのか?」 『チューチュー! (私の声に着いてきてください。もうすぐです!)』 『チューーー!(マヤ、久しぶりね。王子を連れてきたわよ。)』 「あなたは…塔にいたねずみさん?」 「その声は――マヤか?私は魔女の怒りをかい、目が不自由になってしまった。 もしマヤなら返事をしておくれ」 「……王子様……」 「マヤ!!会いたかった!!」 「王子様――ごめんなさい…」 よかった!本当によかったわ…!! 王子もマヤを抱き上げてあんなに嬉しそうに喜んで! マヤの涙で王子の顔もぬれてるわ!ふふ♪ 「マヤ……!見える!君の顔が見える!」 え?い、今なんといったの? 「見えるぞマヤ!君の涙が眼にかかって魔女の呪いが消えたんだ!」 なんてことなの!!!!ブラボー――!!!!!! *********************** epilogue. さて、その後 二人がどうなったかといえば――まーくっついたのは言うまでもない …といいたいけど。 王子とマヤが結婚するまで紆余曲折三歩進んで遠回り。 始めはいやよいやよと婚約解消を嫌がっていた泣きぼくろの御姫様も マヤに子供がいたこととマスミ王子の眼がマヤによって治ったこと。 そしてなにより。 アタシがお役にたったらしいの。 つまり『ネズミがうろちょろしているお城にはうちのかわいい孫は住ませられない!』 と皇帝様のお達しにより泣く泣く諦めて、 今頃は別の婚約話が持ち上がったという話を聞いたわ。 そして二人はようやく結ばれその後、マヤは何人も子供を産み、 王子も今はこの国の王様になって大変豊かで住みやすい国造りを進めて たくさんの人が笑顔で暮らしているわ。 めでたしめでた… なにか忘れているわね。 そうそう!!魔女のおばあさん!!! 始めはマスミ王子に怪我を負わせた罰を与えられる予定だったのだけど、 なによりマヤ、いえ王妃様が自分を育ててくれたのにそれは出来ないと言ったので 「これからは人々の為に勤めること」という約束で罰は免れ たくさんの薬草を教え伝えて―――いつしか彼女は姿は消したけどその医薬はいまでも世界中で使われているそうよ。 さてさて、昔話もこれまで。 さー今夜も王様と王妃様の部屋へ行ってくるわ。 え?見張りよ見張り! 決まってるじゃない!!!! 何ラウンドだか後でちゃんと報告するからね! ちゅーーーー ![]() ::: 前へ ::: もくじへ ::: ![]() ■おしながきへ戻る |