『千年のキス』 by ぷりん様



これは…夢…?
ううん、そんなはずがない。
あたしは速水さんの身体の重みを感じてる。
速水さんの心臓の鼓動が聞こえる。
あたしに触れる手も熱くて。
あたしの中でリズムを刻む速水さんも、とても熱い。


どこかへ飛んでいってしまうような感覚。
もう、何度目なの。
速水さんの名前を呼んでないと、自分がどうにかなってしまいそうで。
速水さんに捕まっていないと、どこかへ一人で放り出されそうで。
生まれて初めての感覚に、あたしは目眩がする。


あたしを見つめる優しい瞳。
あたしに囁く、いつもよりも低めの声。
ああ、あたし、ずっと、ずっと、こうなることを望んでた。
貴方にこうやって抱かれることが、こんなにも幸せだなんて。
ああ、このまま時間が止まってしまえばいいのに。
幸せすぎて、でも、切なくて、勝手に涙が溢れてきちゃう。
あたしは、速水さんの名前を呼び続ける。


その時、速水さんがあたしの口を塞いだ。
あたしの全てを奪っていきそうな激しいキス。
あたしに全てを注ぎ込むような情熱的なキス。
貴方の気持ちが痛いほど流れ込んでくる。
愛してる、愛してる、愛してる…
ああ、息ができない。
胸が苦しい。
それは、本当に息ができないからなのか、あたしの切ない気持ちのせいなのか。
でも、これでも、いい。
あたしは、今この瞬間、たとえ溺れ死んでしまっても、構わない。
ああ、お願いだから、やめないで。







これは…夢…?
いや、そんなわけがない。
おれの腕の中で、恋い焦がれたマヤが声を押し殺して感じている。
マヤの心臓が激しく高鳴っている。
マヤの上気した身体は、ほんのりと薄紅色に染まり、
おれ自身をぴったりと包むマヤは融けそうに熱くて、とても柔らかい。


どこかへ飛んでいってしまいそうなマヤ。
もう、何度達しているのか。
愛しいマヤが、うわ言のようにおれの名前を呼び続ける。
おれはマヤが放り出されないように、手をしっかりと握りしめる。
何度でも達してしまえ、マヤ。


涙を流すマヤ。
おれを呼ぶ愛しいマヤの、艶めいた声。
ああ、おれはどれだけこの日を待ち焦がれていたことだろう。
きみをこの腕に抱くことが、これほどのものであったとは。
ああ、このまま時間が止まってしまえばいい。
おれは一生分の愛をきみに与えられているだろうか。
マヤ!


おれは貪るようにマヤに口づけた。
きみの全てを奪いたい。
きみに全てを差し出したい。
おれの気持ちがとめどなく溢れ出す。
愛してる、愛してる、愛してる…
一生分、いや、千年分のキスを、千年の梅の木の精のきみに。
おれが決して口にすることの出来ない想いを感じ取ってくれ。
おれは、一生分のおれの想いをきみの中で刻む。
マヤ!マヤ!マヤ!
おれは、今この瞬間、たとえ溺れ死んでしまっても、本望かもしれない。
きみから離れることなど、できやしない。



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ぷりんさん、素敵なSS本当にありがとうございました。あなたはわたしの魂の表現者~!(2011/06/02)

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