おいでませ 恋はなひらく、湯のさとへ。 #009 この先もきっと、ずっと、一生。


「…う…、ん…」

わぁ…大きい手
あったかい…

誰の手?だれ、の…


「……〜〜〜っ!?」

「わわ、わ、わ〜〜っ!」
「うぐっ!?!?」
「い、痛っ!!」

「〜〜〜〜〜〜!!」
「は、はは速水さんっ!?」

「だ、大丈夫ですかっ?ごめんなさい、ごめんなさいーっ!!」

「…………っ」
「えっ…」

「いや〜〜〜ん!!速水さんのえっちーーー!!」
「な、何を…っ、きみが勝手にびぜだんだぼーがっ!べ、ぼいっ、ばや!ぶ、ぶるじ…っ」


「ふぅ……朝から疲れるな」
「それはこっちのセリフです…!結局寝たの、明るくなってからだし…っ」

「ああ…。恐ろしく効いたな、この薬…」
「……っ、ええ…、本当に…」

夜が明けるまで…
何度も何度も、好きだ…って、言われたけど…

薬が切れた今…
あの言葉も行為も、すべては幻…ということか…?

「おはようございます。朝食をお持ちいたしました」
「ああ、すっかり遅くなってしまったな、すまない」
「いいえ、とんでもございません。今朝はごゆっくりお休みになられたようで」

「まぁ、お客様。玉ちゃんドリンク、お召しになられたのですね。不味かったでしょう?」
「え、ええ…」
「ラベルも商品名も悪趣味ですわよねぇ。中身はただの不味いジュースですから、ちっとも売れませんのよ」

「はは…――え?今、なんて」
「?はい、ただの不味いジュース、ですか?」
「…ただの、ジュース…?」
「ええ、裏に書いてありますでしょう?普通の清涼飲料水って。本当に、悪趣味ですわよねぇ…ほほ」

「「――――っ!?!?」」

「それではどうぞ、ごゆっくりお召し上がりくださいませ」

「………………」
「………………」

「は、はは、は速水さん、食べましょう、ご飯…!あああたし、おおお腹すいちゃったわ…!」


「きゃあっ!?」

「あ、あの、離してください…っ」
「嫌だ。離したくない」
「速水さん…っ?」

「おれは、まだ薬が効いてるぞ」
「……!だから、あれはただのジュースってっ」
「この先もきっと、ずっと一生…――薬は効き続けるぞ」
「――…っ!」

「マヤ、ここにもう一泊してもいいと思うなら、きみからおれにキスしてくれないか?」
「え…っ、あの……――い、イヤです。そんなのイヤ……」
「嫌…?」

「…一泊じゃ、足りません…」







おわり

連載期間 2012/06/01〜2013/10/02


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