 |
「おいチビちゃん、チビちゃんだろ?いい歳して家出か?」
「え?…速水さん!なぜここに?」
「たまたまここを通りかかったら、きみが大荷物を引きずって歩いていた。こんな時間にどこへ行くんだきみは」
「あの…住んでいるアパートが二週間、改装工事に入っちゃったんです。その間、アパートを出てどこかに身を寄せなくちゃいけないんです。でもあたし、それうっかり忘れてて…とりあえず身の回りのものは持ち出してきたんですけど」
「一緒に暮らしている仲間はどうしたの?きみと一緒じゃないのか?」
「麗も劇団のみんなも今は地方公演の真っ最中で、改装工事中はずっといないから、どこにも頼れなくて」
「なるほど。それで途方にくれて、夜の街をさまよっているのか?呆れた子だな。身の危険は感じないのか?こんな夜遅くに出歩いて」
「あ、あなたに心配されなくたって大丈夫です!あたしだって、それなりにちゃんと考えているんですから…!今日はもう遅いから、とりあえずどこかの公園で一晩しのごうって思って、よさそうなとこ探してるんです。それで明日になったら、桜小路くんにでも相談しようかなって…」
「…桜小路?」
「え、ええ。無理なことお願いできる人って、桜小路くんぐらいしかいないし」
「…………」
「一人暮らし始めたって言っていたから、ちょっとだけなら転がり込ませてもらえるかなーなんて…」
「…………」
「あの、聞いてます?速水さん」
「乗りなさい、マヤ」
「え?」
「車に乗るんだ」
「ええっ?ちょ、ちょっと速水さん!いたっ、痛いです、腕!」
「いいから、乗れ。さぁ」
「ま、待って。引っ張らないで!わっ!」 |