好きと嘘と、キスの値段。#二泊目


「はい!おわりです」
「…昨日と一緒じゃないか。触れたのかどうか、全然わからなかったよ」
「もう〜難くせつけないでください!これでも精一杯がんばってるんです!」
「きみの気合は賞賛するが、いいか。よく考えてみるんだ」
「な、何をですか?」
「昨日、おれは、二週間の滞在なら賃料は50〜60万だと言ったな?」
「…はい」
「賃料を一泊分に換算すると、およそ4万だ」
「…………」
「きみは今のキスが、4万円分に相当すると思うのかい?」
「………っ!」
「だから、よく考えろ。4万円分のキスの内容を」
「4万円分の、内容…?」
「そうだ。今したきみのキスでは、4万どころかせいぜい4円だ。4万まであと39,996円もたりないよ」

「よ、4円…たったの!?」
「ああ。昨日の分と合わせると、79,992円の不足だな」
「ええっ!そんなぁ!速水さん、大企業の社長さんのくせに、せこいですっ!」
「せこいとはなんだ。当然受けるべき利潤の順当性を追尋して何が悪い」
「りじゅんの、じ、じゅんとー…を、つい、ツイ…?」
「ついじん。追求と同じ意味だ…って、もういい。ようするに、きみに分かりやすく言うとだな」

「もっと、おれを満足させてみろ」
「…ど、どうやって…?そんなの、あたし解らないわ…。そんなこと言うなら、教えてくださいよ…どうやったら不足分、支払えますか」
「教えて欲しいか」
「…はい」
「じゃあ…きみの唇を、貸してごらん」
「か、貸してって、あの」
「早く」
「〜〜〜っ、はい」

(マヤ)

(好きだ)

「同じことを、してみろ」
「…は、い…」

(…好き…速水さん…)

「…今のだと、4円から随分価値が上がった」
「え?本当?…いくらぐらいですか?」
「ま、百円だな」
「ひゃく?まだ百円なのっ?」
「4円から百円だぞ?なかなかの高騰ぶりだろう」
「でも、これで百円なら、八万円分支払うまであと…」
「このキスを、800回」
「はっぴゃっかい」
「くっくっく…そういうことだ」
「…はっぴゃく…!?もう速水さん!?からかうのも本当に、いい加減にしてください!こっちは真剣なのに…っ!」
「チビちゃん。実は」
「っ?」
「一気に価値が、千円に跳ね上がる、とんでもないキスがある」
「……!?と、とんでもない…って…、…もしかして、あの、まさか…」
「ほう、ニブいきみでも察しがついたのか?それだよ。さぁ…どうする。百円を10回か、千円を一回か」

「ん…ん、ん…」

「…はぁ、はぁ…」
「つらいか…?」
「な、なんか…変なかんじ」
「変?」
「どこからが速水さんで…どこからが自分なのか、わからなくなりそう」
「…そうだな…」

熱い。
身体が震える。
息がぜんぜん上手くできない。

触れ合っている場所から、気持ちが溢れ出てしまいそう…!

こんなことが、あと10日以上も続くの…?


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