好きと嘘と、キスの値段。#八泊目/01




え…ええっ!?

なにっ?なに!?何なの!
どーして速水さんと一緒に寝てるの!?
あ、あれ?速水さん…いつ来たの?

あ、あたし…服、着たままだわ…
は、速水さんも…

手…
どうして、速水さんの手、あたし握っているのっ?


「………!?」

「おはよう」
「速水さん…っ!」

「な…!起きてっ…起きてたんですかっ!?」
「今起きたんだよ」
「な、なんで、どうしてあなたがここに…っ!」
「…覚えてないのか」
「ななっ、なにをっ?」
「きみがおれの手をつかんで、離さないまま眠ってしまった。それで、帰れなくなった」
「ええっ!?そう、なの?…うそ…、ごめんなさい…」
「いいさ…面白いものも見れたしな。きみの、その顔…くっくっくっ」
「〜〜〜〜!!もう、速水さんのバカ!手、離してください、手!」

「? なんですか!?」
「…いや、なんでもない」

――きみが「行っちゃやだ」と言ったんだ。
…というのは内緒にしておこう――

「へ、ヘンなの。人の顔、ジロジロ見ないでください!」

――また、あの優しい瞳……
そんな目で見ないでよう……

「…あれ?速水さん、今日はお休み?」
「ああ。久々に日曜に休みがとれた」
「へえ…そうなんですか」
「きみは今日、何か予定はあるの?」
「いえ特に何も…、速水さんは?」
「…今日はきみにつき合ってみるのも悪くないかな。チビちゃんといると退屈しないからな。楽しく過ごせそうだ」
「…なんかイヤミな言い方…っ」
「今さら何を。さ、支度して腹ごしらえしに出かけよう。腹減ったぞ」
「あ、あたし!まだ今日はあなたと過ごすなんて、言ってませんけどっ?」


「プッ……本当にきみって子は退屈しないな。ほら、ブツクサ言ってないでさっさと出かける用意しろ」
「……もうっ!なんなの、この根性ナシのお腹はっ!」








「……行かないのか?」
「…え?」

「出て行かないのか?いつもアラームが鳴ったと同時に、逃げるように部屋から出て行くだろう」
「…………」
「…チビちゃん?」

マヤ……なぜそんな顔をする?

「…抱きしめても…いいだろうか」
「えっ……」
「キスはしても、きみを抱きしめたことが、まだない」
「…………」
「…嫌か?」

「イヤ…じゃないです…」




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