好きと嘘と、キスの値段。#アパートにもどる日



「…大丈夫か?」
「…大丈夫です。たくさん教えてもらいましたから、速水さんのこと。あたししか知らないあなたを、いっぱいいっぱい憶えたから…」

「おれも沢山きみを知った。おれしか知らない、おれだけが知っているきみを…」


「そろそろ送っていこう」
「…はい」


「帰る前に、少しつき合ってもらえないだろうか」
「え?」
「大丈夫、きちんとアパートまで送り届けるから。青木君には少々遅くなると連絡しておきなさい」
「は…い」

「行こう。きみに見せたいものがあるんだ」

「見せたいもの…?」



「わぁ…!速水さん、見て!星がいっぱい見えるわ…キレイ!」
「ああ、月も無く良く晴れたようだな。絶好の観察日和だ」
「観察びより?」
「そうだ。今夜は流星群…流れ星がよく見える日なんだよ」
「流れ星…」

「都会にいても少し車を飛ばせば、こうして星空を楽しむことができる。普段そうしないのは、そうまでして星空を眺めたいと思う相手がいないからだ…」
「速水さん…」

「これからは毎年二人で流れ星を見よう。約束だ」
「毎年二人で?」
「そう、毎年。必ず。こうして二人で…」
「はい…!はい、速水さん…!約束ですよ。あたし、毎年楽しみにしてますから!」
「ああ、もちろんだよ。約束は絶対に守る」





「…いつもあなたを見ています。あなたのファンより…――」

「紫の薔薇の陰から、輝くきみをいつも見ていた。すまない、今まで言い出せずにいて…」
「…あ、ぁ…――っ」
「何もかもすべてを捧げてくれたきみに、これ以上秘密をもち続けることなど出来なかった。これで本当に…嘘は何ひとつ無くなった。紫の薔薇のひとは、このおれだ…!」
「速水さん…っ!」

「…速水さん…――!」

「おや…?チビちゃん見てごらん、こんなところに…流れ星が…」
「…えっ…?」

「――…う、そ…」
「嘘じゃないよ。さぁ、紐を解いて…」

「は、速水さん…これ…っ」
「貸してごらん」


「今は…右手に。全てを清算できた時に、あらためて左手にふさわしい流れ星を贈るよ。それまでは、この星をおれだと思っていて欲しい」
「この指輪が…速水さん?」
「そうだ。これで片時も離れずに、おれはきみのそばにいられる」
「!……っ」

「この指輪にかけて誓うよ。夜空を翔る星のように、必ずきみの元にたどり着く。絶対だ。約束する。だから信じて待っていてくれ。地上で輝くきみを必ず迎えにいくから…!」

「ああ…!!速水さん、速水さんっ…!紫のバラのひと…!!」
「マヤ…!」

「ありがとう…ありがとうございます速水さん。あなたが好き、速水さんが大好き…!紫のバラのひとが、あなたでよかった…!!」






おわり

連載期間 2010/12/09〜2011/11/16


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